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地域活性化活動

鹿児島発酵ツアー2日目

第9期発酵プロフェッショナルの末森光紘です。
先日行われました協会主催の鹿児島発酵ツアーの2日目の報告です。
2日目(3月19日)
昨日の夜から鹿児島は雨でした。 今日まず最初に向かったのは個人的に楽しみにしていました、鰹節の山吉國澤百馬商店です。雨だと外で天日干しの工程が見ることが出来ないのです…さすがあんなにも降っていた雨が移動の途中にはすっかり晴れてました。皆さん、持ってます!
指宿市山川は仕上げ節の生産量日本一で、全国の7割を作っています。その中でも山吉國澤百馬商店は、鰹節から鰹パックまで一貫して行っています。また、国産の一本釣り鰹を使用しています。まき網漁では2時間くらいかけて鰹を水揚げするので鰹が力を使い切って鮮度が落ちていきますが、一本釣りだとエネルギーをため込んだまま急速冷凍されるので鮮度が保たれたままの鰹を原料に出来るからです。鰹節は荒節に2回のカビ付けで本枯節になりますが、山吉國澤百馬商店は最低3回以上のカビ付けします。3回以上カビ付けすることでより余分な水分をさらになくし、うま味成分を増やすことが出来るからです。これらの工程を約半年もかけて、手間も暇もかけて昔ながらの製法にこだわっているので、上品な香りと深いコクと透明感のある鰹出汁が出来るという事・鰹節一つでもたくさんの作業工程を得て、職人さんの手が関わっているのを実際の目で見て、肌で感じる事が出来ました。

次に向かったのは、山川漬の内園賢漬物店に向かいました。

バスの中で事前に山川漬の事を教えてもらいました。山川漬はつぼ漬ではないという衝撃の事実が分かりました。実は、壷に漬けられているのが山川漬で、ステンレスのタンクなどで付けられているのがつぼ漬との事でした!

山川は冬でも雪も降らない温暖な気候で、大根を乾燥させるのに最適です。製法がとても独特でした。干した大根を塩をまぶしながら杵で叩き込みます。壷の底にすのこを敷いて、そこに叩き込まれた大根を敷き詰めます。なんと2000~2500本の大根が一つの壷に入るそうです!敷き詰める時に真ん中にパイプを入れます。これが山川漬の特徴なんです。このパイプは発酵過程で大根から出た浸出液を抜き取るために入れます。浸出液を抜き取ることで余分な塩分が無くなるので、塩分の少なく大根本来の味と栄養成分が残されたままの漬物、山川漬が出来上がります。最低半年以上発酵・熟成をさせないと大根の苦みが残るそうです。半年以上発酵・熟成された山川漬は何とも歯ごたえが強く最初はびっくりしましたが(たくあんの3倍の硬いそうです)、噛めば噛むほど香ばしく甘みが増す美味しい漬物でした。

この山川漬の製法や成分を調査された方が居て、大根由来の糖類・有機酸がそのまま残され、アミノ酸や食物繊維も豊富に含まれる機能的に優れた漬物であることが化学的にも証明された漬物であることを知りました。昔の人は化学的に証明されなくても乳酸発酵された山川漬が体に良いことを知っていたんですね。先人の知恵は偉大です。

次に向かった先は、さつま焼酎「白波」の明治蔵に訪問しました。名前の通り明治からある蔵で壁には戦争当時の弾痕のあとが今の残っていました。蔵の中には焼酎の仕込みに使われる道具、機械、甕など展示されていました。これらの展示されている物は現在も使用されていて、仕込みをしている作業風景も見学ができるそうです。そんな雰囲気の余韻に浸りながら、しっかりと焼酎の試飲を少し贅沢に楽しみました。

最後に向かった先は、本土最南端に位置するウィスキー蒸留所の本坊酒造さんの津貫蒸留所に行きました。マルスウィスキーの生みの親は、岩崎喜一郎といいます。この岩崎氏は、NHKの連続テレビ小説「マッサン」のモデルとなった国産ウイスキーの父、竹鶴政孝氏の上司なんです。竹鶴氏をスコットランドへ送り出したことで知られています。この岩崎氏の生徒だったのが本坊酒造の本坊蔵吉なんです。後に、岩崎氏の娘婿となり、さらに岩崎氏とともに製造技術を大きく前進させたとされます。

この「マルス」という名は、本坊酒造が創業当時からシンボルとしてきた「星」のなかでも、戦いの神、そして農耕の神でもあるマルスに由来する火星Marsにちなんでつけられたものらしいです。

蒸留された時は無色透明な液体なのが、樽の木の素材・貯蔵場所・気候などの影響に同じところでも、違った味わいや花織のウィスキーが出来上がります。蒸留所は信州と屋久島と津貫の3か所にあります。その三か所はそれぞれ環境の条件が違うためそれぞれの個性豊かなウィスキーが出来ます。人間の行う工程は最初だけで、あとは自然に任せるのみ。そんな自然が生み出すウィスキーにロマンを追いかける作り手の想いに感動しました。

この2日間で鹿児島の黒酢・黒酒・鰹節・壺漬け・焼酎・ウィスキーといった、鹿児島の気候を活かした発酵食品を堪能してきました。

今回の鹿児島発酵ツアーを主催して頂いた、横山理事と上級認定講師の藤本先生、加盟店の福山黒酢株式会社の竹下義隆さん並びに見学させていただいた関係者の方々に感謝を申し上げます。