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魅惑の白い醤油!「しろたまり」

こんにちは。是友麻希です。
私は、調味料を買うのが、趣味です。
仕事柄なのか、はたまたこういうことが好きだから今の仕事を選んだのか、
どちらが先か分かりませんが、
昔から、旅先で見つけた調味料を買うのが大好き。
結局は、調味料を探す旅のようになり、
挙句の果てには、今ではいろんな調味料を求めて、全国を出張しています。
これだけ色んな調味料を買い集めると、
一生かかっても使い切れないくらいの味噌や、もう何だったか忘れてしまった怪しい調味料など
自宅の食品棚は、大変なことになっているわけです。
そうすると、「お、これ美味しい!」と思っても、まだまだ違う調味料があるので
なかなかリピートできません(笑)
こまった仕事病です。
しかし、その中でも、いくつかリピートしている調味料があります。
そのうちの一つが、
先日ご紹介した三河みりん
そして、こちら
日東醸造の「三河しろたまり」です。
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数年前にこのお醤油に出会い、以来愛用しています。
甘味、うま味、まろやかさ、何をとっても素晴らしく
日本料理を生業としている私にとっては、色を付けたくないお吸い物などには最適。
また、お寿司にも、とても合うんです。
とにかく美味しいお醤油で、一時期はいろんな料理人の友達に、
勝手に宣伝して、よくプレゼントしていました。
今もあるかどうかは不明ですが、
恵比寿の賛否両論の笠原さんのお店の奥の壁際に飾ってある
「しろたまり」は大昔に私があげたものです(笑)
そんなこんなで、長年大好きな日東醸造さんの「しろたまり」
なんと表現したらいいのでしょうか?
甘味もあり、うま味も深く、そして醤油独特の香りもある。
醤油であるような、醤油でないような・・・・・
はい、そうなんです。
実は、この「しろたまり」
法律上は、醤油ではないんです。
そもそも醤油というのは、大豆と麦を原料とし、
そこに塩と水を加えて発酵させて搾った液体調味料です。
大豆を使っていることが原則なんです。
しかしながら、この「しろたまり」は大豆を使用していません。
それゆえ、醤油という表記はできないのです。
では大豆を使っていないと、一体なんだというのでしょうか??
そもそも醤油は、大きく分けて5種類あります
①濃口醤油
関東を中心に発展してきたお醤油です。
大豆と小麦を1:1の割合で仕込みます
全国的に、一番多く使われているお醤油。
②淡口醤油
関西を中心に発展してきたお醤油です
仕込みは濃口とほぼ同じですが、最後に甘酒や食塩水で薄めます。
③再仕込み醤油
山陰地方を中心に発展したお醤油で、
通常、大豆と小麦に、食塩水を加えて仕込むところ
食塩水ではなく、醤油で仕込みます
なので、作ったものを再び仕込むので「再仕込み」です。
④たまり醤油
こちらも愛知県を中心に発展したお醤油で、
もともとは、豆味噌の上に溜まった液体です。
大豆:小麦が9:1のトロッとした濃いお醤油です。
そして
⑤が白醤油
こちらが、愛知県碧南市発祥のお醤油で、
通常の醤油とは異なり、小麦が主原料の琥珀色のお醤油です。
大豆と小麦を1:9の割合で使用します
そう、つまり、大豆は少なくて、小麦が多め。
大豆はタンパク質で、小麦はでんぷん。
つまり、でんぷんが多い白醤油は甘味が強いんです。
なので、あまり強い味をつけたくないもの、
素材のうま味を活かしたいものにむいています。
たとえば、鯛のお刺身。
濃い醤油をつけてしまうと、醤油の味しかしなくなりますが
白醤油で食べると、美味しい。
あとはイカ。これも同じ理由。
イカの甘味をさらに際立たせてくれます。
日東醸造の「しろたまり」は、この白醤油と似ています。
が・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかーーーし、日東醸造の「しろたまり」は一切大豆を使っていらず、小麦だけ。
なので「醤油」とは表記できない・・・・・というわけです。
この「しろたまり」は
「究極の白醤油」を作りたいという日東醸造の先代の想いから
国産小麦を通常の二倍も使用し、ミネラル豊かな三河の天然水と伝統海塩「海の精」を使って
さらには、三河の山奥に蔵まで作ってしまい、なんとも素晴らしいストーリーと共に誕生したのです。
究極の白醤油を!!と、追求した結果、「醤油」とは名乗れなくなったという
なんとも皮肉な結果ですが、
ここまでこだわると、むしろ「しろたまり」は醤油ではなくて当然なのかもしれません。
醤油であって、醤油でない、
「醤油」とは全く別の調味料としての地位を確立しているのです。
そんなふうに思える素晴らしい調味料がこの「しろたまり」です。
いつか、ここに行ってみたい・・・・・・
そう、ずっと思っていました。
先日、その願いが叶って、日東醸造さんにお邪魔してきました。
日東醸造(株)があるのは、愛知県碧南市

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そう、先日ご紹介した「三河みりん」の角谷文治郎商店さんと同じです。
愛知県南部では古来より伝統の醸造技術を活かし、
酒をはじめとする醸造製品が盛んに造られてきました。
温暖な気候・風土に加え、矢作川・豊川など豊かな水源もあり、
三河平野で収穫された米、麦、大豆をもとにした発酵・醸造製品が
数多く産出されてきた土地です。
とくに、ここ碧南市は、白醤油発祥の地とされています。
しかし、実はこれは伝承なんです。文献が残っているわけではありません。
先ほども記述したように、愛知県は「たまり醤油」の生産地でもあります。
ここ碧南市周辺も、昔から「醤油」という言葉を使わない地域だったそうです。
すべて「たまり」
醤油ではなく「たまり」と言ったそうです。
そんな地域で、なぜ「白醤油」が生まれたのか・・・・・
おそらく小麦で仕込んだ金山寺味噌から染み出てきた液体(たまり)が
「白醤油」=「白たまり」だったのではないかと考えられています。
実際に「白たまり」という言葉は江戸時代の文献にも登場します。
さて、今回お邪魔したのは、日東醸造の本社工場。
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白衣着用はもちろんのこと、
徹底的に衛生管理されています。
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ご案内してくださったのは、なんと蜷川洋一社長
今回初めてお会いしたのですが、
お顔をくしゃくしゃにしてハニカミ笑いをするそのお姿に
私は、一瞬でファンになってしまいました。
素敵♪本当に素敵な社長様なんです。
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愛知醸造界のハニカミ王子です。
いや王子は失礼ですね。
王様です。
ハニカミ王様。
すてきです。
さて、話は見学に戻ります。
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実は、この本社工場では、私の大好きな「しろたまり」は作られていません。
日東醸造では、創業以来、白醤油を作り続けていますが
それらは業務用として加工食品の味付けにも幅広く使用されています。
あられや、数の子、いくらなど、実は私たちが知らないだけで
白醤油はとても多くの加工食品に使われているのです。
そんな業務用の白醤油が作られているのが、この本社工場。
白醤油を作っているのは、日本でも数社ほどしかありません。
そして、例の「しろたまり」は。。。。と言うと、
本社工場から車で1時間半の山奥。
ものすごい場所に蔵があります。
結局、いろんなものにこだわり抜いて、最終的にたどり着いたのが「水」だったそうです。
今回は、残念ながらそこまでは行く時間がなかったので
本社工場を見学させていただきました!
白醤油を仕込むには、まずは麹を作ります。
最初に驚いたのがこちら。
じゃじゃん。
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こちら、なんだか分かりますか?
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麹を作る製麹機です。
なんと、横長!
原料の小麦を蒸して、そのままこの中で麹にします。
一般的な濃口醤油などに使用する麹は
大豆を蒸して小麦を炒って作りますが、白醤油は逆です。
小麦を蒸して大豆を炒って作るのです。
通常は蒸すための蒸煮管と麹室は別々のタイプが多いですが、
こちらの機械はトロンメル型という珍しいタイプです。
白醤油用の麹が出来上がったら、あとは塩と水を加えて仕込みます。
一般的な濃口醤油だと、このあとタンクの中で約6か月間、適度にかきまぜながら
発酵をすすめていきます。
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しかし、白醤油は違うのです!!
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仕込んで1~2週間すると、このように麹がタンクの上に上がってきます。
すると、なんと白醤油は、このように覆ってしまうのです。
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そして重しとフタを兼ねた水タンクを乗せます。
発酵が進んでくると、麹はぷくぷくと浮き上がってきます。
その浮き上がってきたところに悪いカビが生えてしまうのを防ぐためです。
小麦が主原料の白醤油は、大豆がメインの他の醤油に比べてデンプンが多いため
雑菌も繁殖しやすいのです。
よって小麦麹が塩水に浸っている状態を保つために、この水タンクの重しを乗せます。
白醤油の麹は塩水の中で正常に働きますが、空気中では雑菌の繁殖を招く恐れがあるのです。
そしてもう一つは、酸化による着色防止。
そうです、
白醤油はできるだけ色をつけたくないのです。
そういった理由からも、白醤油は、一切かきまぜません。
櫂入れしないのです。
そしてなんと、このまま2~3カ月放置です。
非常に発酵期間が短い。
しろたまりでも4か月ぐらいです。
これでおしまい。
このあとは搾ります
搾り袋の中に、諸味を入れて・・・・
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圧搾機で上からプレスします
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横から染み出てきたのが、白醤油です。
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そして、通常のお醤油は、このあと保存のために「火入れ殺菌」して製品になります。
しかし、白醤油はこのまま!
つまり「生のお醤油」なんです!
火入れをしない理由は、主に2つ
①火入れをすると色が濃くなる
②火入れをすると香りが変わる
この二つです。
小麦麹は火入れをすると好まれない香りが出てしまうのだそうです。
それゆえ、白醤油は、「生のお醤油」なんです!!
残念なのは、生だということは、保存には向かず
8か月くらいしか持ちません。
しかしそれだけ、繊細な「白醤油」だからこそ、
繊細なお料理にも繊細な味を醸し出してくれるのです。
いかがでしょうか?
みなさんも「白醤油」と「白たまり」を使ってみたくなりませんか?
私は、ますます日東醸造のしろたまりが好きになりました。
もともとは、この本社工場は酒蔵だったそうです。
そこを改装して作られました。
それゆえ、社員食堂の、みなさんの頭の上には、こちら・・・・・
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なんとも素敵な環境でのランチタイムなんでしょうか?
ほのかに立ち込める醤油の香り
そして、この雰囲気。
ランチなんて、この醤油の香りだけで、
白飯が3杯は食べられる気がします(笑)
干してある袋でさえランチのおかずになりそうな気がしてきます(笑)
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こんな素敵な場所でランチが食べれ、働ける社員の方は幸せだな~と心から思いますが
その幸せっぷりは、社員の方にお会いしても、すぐに分かります。
みなさん、目が輝いていらっしゃるんです。
そして、元気なんです。
そして、とても明るいのです。
今回、日東醸造さんに伺って、こちらのお醤油が美味しい理由が分かった気がします。
それは、第一に社長をはじめ、社員の皆様の温かさと愛社精神です。
実は私、この仕事をする前は、とあるIT企業で営業をしていました。
それゆえか、会社の受付の方や、最初にその会社に入ってお会いする方で
その会社の雰囲気がわかります。
こちらの会社はすごい。
こんなに気持ちのよい会社に初めて出会いました。
徹底した社員教育
そして、細部にまで衛星管理れた工場
愛情醸造界のハニカミ王様の蜷川社長のお人柄が出ているお醤油なんだなと感じました。
遠くまで見えるように澄み切ったクリアな「しろたまり」
クリアでまじりっけのない色合いでありながら、そこには奥深い甘さとうま味が潜んでいます。
しろたまりで、肉じゃがを作ってみてください。
それはそれは、美しく美味しい肉じゃがが出来あがります。
しろたまりで、お吸い物に味をつけてみてください
料理の腕が上がったのではないかと錯覚します。
しろたまりで、茶わん蒸しを作ってみてください
・・・・・・・・・・・・・
もう自分は天才なんじゃないかと勘違いします
ちなみに、こちらもお勧め
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毎日のお料理が楽しくますよ
あらためて、本当に素敵なお醤油に出会えたことに感謝しつつ、
次回は絶対に山奥のしろたまり蔵に行きたい!!!絶対行きたい!!
そうだ、今年の8月に行こう!と、勝手に心に決めたのでありました(笑)
(社長、伺ってもよろしいでしょうか?)
御世話になりました蜷川社長、そして日東醸造株式会社の皆様、
本当にありがとうございました。
貴重な時間を過ごさせていただきました。
なお、日本発酵文化協会では、今年の8月に
なんと蜷川社長をお迎えして「白醤油講座」を企画中です!!
これは見逃せません!
詳しくは、決まり次第ご連絡しますね。
どうぞお楽しみに♪
~今回お邪魔した場所~
日東醸造株式会社
〒447-0868 愛知県碧南市松江6丁目71番地
しろたまりは、こちらのHPより購入できます。