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ブログ

発酵ツーリズム@山形

発酵プロフェッショナルの白瀬まゆ美です。
 
発酵プロフェッショナル&スポーツライター&ざっくりいろいろなフードコーディネーター&粘土細工作家
 
ここ数年、肩書きをどうすればいいのかわからず、名刺には名前だけで、裏にできることを片っ端から書き連ねて、お会いした人の希望があれば、手書きで肩書きを書いています(汗)
 
誰かに人を紹介される時も、忙しく有能な友人は、単独で会ってこい!みたいな男前な紹介をするので、お会いすると「とにかく面白い人」としか聞いていないんだけど、何してる人?と言われます。なのでとりあえず名刺の裏を見せるのが便利な訳です。
 
私の人生を振り返ると、出会い運だけでここまで来ました。スポーツライターになったのも大学時代にサッカー雑誌の編集者さんにお会いして、何かお仕事ないですか?と聞いたら「一眼レフがあれば仕事あげるよ!」と言われ、友達に小声で「一眼レフって何?」と聞くような有様でした。しかし、何を思ったか翌日カメラのキタムラで「一眼レフください!初心者でもスポーツが撮れるのください!」と元気に言い放ち、箱に入れたままの一眼レフを持ってその足で編集部の扉を叩いて、「買ってきました!」と言ったのが始まりでした。翌月から専属のライター&カメラマンになりました。
 
一度新聞社には入社しているのですが、2年で辞めてからは30歳までは死ぬ気で働いてきました。五郎丸選手のようにルーティーンが固まった頃、食のお仕事を始めたので、サッカーと食を通じて世界を盛り上げよう!と思っている今日この頃です。
 
ということでJ1リーグのサッカークラブがあるまちへ行っては、勝手に発酵発掘ツアーを慣行しています。それを知るお友達からこんな人知ってるけど会う?と推薦してくれたのが、本日ご紹介する山家(やんべ)の母です。
 
山形県山形市の東部に位置する山家(やんべ)地区に太田酢醸造さんはあります。創業150年以上。寛永初期に殿様から麹づくりの独占的権利を授かった「山形麹」の発祥の地なのだそうです。今でも醸造業が盛んで、通りを歩けば、こうじ屋・味噌屋・醤油屋・酒蔵などが軒を連ねている発酵のホットスポットなのです。
 
商品はお酢とお味噌とおつけもの。ここは有名料亭や飲食店向けにおろしている、知る人ぞ知る醸造会社さんです。ご紹介くださったのは、ご実家が料亭で、そこのお酢とお味噌を使っており、フレンチ店等のオーナーもしている素敵な女性です。
 
紹介しておきながら「いろんな意味で気をつけて!」と謎のメッセージが前日に送られてくるという恐怖心。ゾクゾクワクワクしました。
 
当日、言われた住所に時間通りに到着しましたが誰もいません。どうしようと思いつつここは田舎あるあるだ!ということで庭へ入って見ましたが、誰もいません。前日に電話しなかったからかな…と思い帰ろうとしたところ、一輪車にゴミを乗せて一人のお母さんが敷地内へ入ってきました。
 
お母さんより敷地の内側にいる私は完全に不審者です。都会なら通報されるレベルです。なので精一杯元気に紹介者の名前と見学に来たことを伝えると、一瞬の沈黙はありましたが「あはは、今日だった?よかった!待っててくれて~」と豪快に笑うと、作業場へご案内くださいました。
 
「せっかく来てくれたんだけど、今ね全部売り切れちゃってるのよ。だからごめんね。今日はお味噌を1つあげるけど、頼まれた数の商品は後から送るわぁ~」と言いながら、掘りごたつに火を入れ、ストーブをつけ、どてらを渡されました。
 
そう、訪ねた時は今年の3月。今年の春は遅くて、まだ前の週は雪かきをしていたという時期。モンテディオ山形の石崎監督は私が取材するエスパルスの元監督でもあるのですが「先週やったら雪で凍え死んどるよ~」と笑われたほどです。
 
お母さんがお湯のみでまあ飲みなさいと出したのがコレ。
 
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味噌のみの味噌汁です。熟成が進んでいるお味噌なので、深みのある強いうまみを角の取れた塩味が引き立てていて、後からほのかな甘味が追いかけてきます。「お、美味しいです」と発した私でしたが、その後は頷くだけでした。
 
お母さん3時間半しゃべり倒しました。さすが地元の名士で演説などはお手のもの。お味噌へのこだわりまで余すことなく教えていただきました。鉄分を加えるために鉄釜を作る。人あっての自分。でも自分が自分であることが大事と味噌やお酢づくりを通じた人生論までバッチリインプットしました。お休みのため従業員さんはいなかったものの、ひっきりなしに、お酢用の一升瓶が運び込まれたり、お花が届けられたり、人が出入りしています。そしてそのたびにとびきりの笑顔で迎えて、私を紹介し、そして帰りにエスカップを渡して送り出す。この繰り返しです。
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はい。これが証拠のエスカップ!ではなくその後ろにあるのが鉄の大釜です。これで大豆を炊くわけです。
本当は蔵を見せていただきたかった。麹も自家製だというので、その室も見たかった!でも、お母さんのマシンガントークの中で、唯一言えたのは「麹を見せてもらえませんか?」の一言でした。
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みなさん、やりました!百戦錬磨のお母さんから私が唯一勝ち取った1点。値千金ゴールです!迷わず口に入れたので、お母さんは少し驚いていました。かなり甘い!今まで食べた米麹の中で一番甘い!これは澱粉分解酵素が強い証拠。寒い地域だからこそかもしれません。そしてその甘さより驚いたのは麹を触っているお母さんの手。確か70代後半のはずです。
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これぞ米麹に含まれる美肌の源、「浩二さん」ではなく「コウジ酸」のパワーです!!オリゼちゃん(米麹の英名アスペルギルスオリゼ)エライぞ!GJ!
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これがお母さんからいただいたお味噌です。都内で室温保存したら膨張するほど、麹歩率が高く鉄分たっぷりのお味噌です。お母さんの愛情とパワーそのものでした。
そして、凄いのが後日送られてきたお母さんのお酢。やんべの精酢。ツンと来ないから、ピクルスや洋食にも合う!私はリンゴを刻んでお酢と蜂蜜を入れてフルーツ酢にして飲んでいます。
会社のHPもオンラインショップもないんです。だって作り間に合ってないのですから。これじゃなきゃダメって言う人のために作るのよ~というお母さんの愛情たっぷりのお酢とお味噌。
お酢はこちらから購入可能です。
http://www.yamagata-bussan.co.jp/SHOP/A029.html
来月お母さんに会いに行こうと計画中です。
今度はたっぷりのお土産を持って行こう。
そして、麹づくりも習ったので、種麹もちょっと分けてもらおうと思っています。